八木澤くんは不器用に想う
教室に着いて、机にカバンを置いて
教科書類をカバンから出していたら、隣の席に人が来た気配が。
「……安木」
「……」
「なぁ…無視すんなよ…」
横から、私に向けてる声がする。
でも、振り返りたくない。
「…怒ってんだろ、昨日のこと」
「怒ってないから。勘違いしないでよ。
……別に待ってなかったし、そもそも集合場所に行ってないから」
『八木澤くんが謝ることなんてないから』と言って、目線を合わせないまま席に座る。
昨日のことは…八木澤くんだって仕方がなかったことだもん。
八木澤くんを責めるつもりはない。
だから嘘をついた。
『待ってた』なんて、言いたくなかった。