八木澤くんは不器用に想う
「礼。ありがとうございましたー」
挨拶が終わって、もう一回席に着こうとした時、
隣から手が伸びてきて、ぐいっと腕を引っ張られた。
「安木、体調悪いだろ。
保健室に…」
「……いいっ!」
八木澤くんの手を振り解こうとしたけど、力が入らなくて解けなくて、ただ腕を振っているだけ。
八木澤くんと、顔合わせたくないのに
振り解けなくて、ずっと顔見られてるの、やだ。
「…安木」
「初ちゃん」
困っていたら、東雲くんが私を呼んで。
肩に手をまわして、八木澤くんの手をやんわり解いてくれた。
「……孝弥」
「初ちゃん、ちょっと」
八木澤くんが呼ぶ声を無視して、東雲くんは私を支えながら教室を出る。