八木澤くんは不器用に想う
「……安木、やっぱり具合悪かったんだな」
さっき腕掴んだ時、ちょっと熱い気がした。
目を閉じて寝息をたてる安木を見つめると
孝弥に「おい」って低い声で言われた。
「……なんだよ」
「彼女とデートしながらこんなとこ来んな。
初ちゃんの目が覚める前にどっか行けよ」
孝弥が俺の後ろにいた花奈実を見ながら言う。
……彼女?デート?
「誤解すんな。
花奈実は彼女じゃねーから」
「誤解されるくらいには、
そういう雰囲気に見えてるってことだよ」
鋭い視線をこっちに向けながら孝弥が言うと、
安木が苦しそうに『う…』と唸って、首を横に倒した。
「うるさかったかな。ごめんね」
小さく呟いて、安木の頭を撫でる孝弥は
見たことないくらい、優しい顔をしていた。