八木澤くんは不器用に想う
*優先順位



*初side




「……ん…」




自分の唸り声で、パッと目が覚めた。



……あ、ここ、保健室?



まだ眠いなぁって思ってもう一度目を閉じようとした時、


カーテンがシャッと開いた。




「安木さん、起きた?」



「あっ、はい」



「もう放課後だけど、家まで帰れる?
無理なら親御さんに連絡するか、先生が送るけど…」




……放課後?


窓から入る日差しは、夕焼けの赤さだった。



……結構寝てたんだ、私。


午後の授業、サボっちゃった。




「いえ、大丈夫です。
一人で帰れます」



「一人で帰れなんて言ってないわよ。
歩けるなら、同じクラスの八木澤くんが送ってくれるって」




……八木澤くんが?




< 182 / 286 >

この作品をシェア

pagetop