八木澤くんは不器用に想う
私の手をとって、立ち上がった時にフラついたのを見て支えてくれる。
「っと、危ない。
まだ熱下がってないな」
「あ、ごめんね」
「いいよ。寄っかかる?
それかおんぶしようか?」
「おんぶはさすがに恥ずかしいから遠慮します…」
東雲くんは教室から私のカバンを持ってきてくれて、自分のカバンと2つ、肩にかけていた。
「あ…私のカバン」
「いいよ。俺が持ってあげる」
「でも…」
「病人は黙って言うこと聞く」
わかった?と私の顔を覗き込んできて、『はい…』と頷く。
東雲くんは先生に『さようなら』と声をかけると、私を支えながらゆっくり歩き出した。
「あの…東雲くん?」
「ん?」
「先生からは、八木澤くんが送ってくれるって聞いたのだけど…」