八木澤くんは不器用に想う




「………」




東雲くんと話しながら玄関まで歩いてきた時、


外から誰かが走ってきた。




「……安木!」




はぁ、はぁ、と呼吸を整えながら私の目の前に来た彼。


なんで…?って思ったら


東雲くんがぎゅっと私の体を抱き寄せた。




「……!」



「……怜央。なんで来た?」



「……送るって、言ったから」



「……柳さんはどうしたんだよ。
放課後になっていつものようにA組に現れて、
狙ったように突然『体調悪くなった』って言い出して保健室行って?
『一人で帰れない』って泣きつかれて一緒に帰ってあげた彼女はどうしたわけ?」




東雲くんの冷たい声が、3人しかいない玄関に響く。



『また約束破った』



……そういうことだったんだ。




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