八木澤くんは不器用に想う




やっぱり八木澤くんが、柳さんを特別に思ってるからだよ。


だから柳さんを優先するんだ。




「…だから、花奈実を送って、急いで戻ってきたんだろ」



「遅いんだよ。
お前は…待ってる方の気持ちも考えろよ!」



「孝弥…」



「初ちゃんは俺が送る。
お前は帰れ。
大好きな幼なじみの傍にいればいいだろ」



「だから、花奈実はそんなんじゃ…」



「花奈実花奈実って、耳障りだな」




東雲くんの機嫌が、相当悪い。



東雲くんは八木澤くんを睨みつけると、


私に『行こう』と言って、八木澤くんの隣を通り過ぎて帰路についた。



あんな言い方して…八木澤くん、さすがに傷ついてないかな…?



振り返ったら


八木澤くんはまっすぐこっちを見ていて。




「……安木…」



「………」




八木澤くんと目があって、パッと視線を逸らした。




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