八木澤くんは不器用に想う
「し…ののめ、くん…?」
「……あっ、ごめん!」
声をかけたら、我に返ったようにすぐにパッと離してくれた。
……び、びっくりした。
抱きしめられるとは思わなかった…。
「マジで病人に何してんだろ…。
ごめん、いきなり」
「ううん、全然大丈夫…」
ハグくらい、東雲くんにとっては挨拶程度のものだろうし…
深い意味なんて全然ないだろうし、気にしちゃダメだ。
「あ、初ちゃん家着いたよ」
「本当だ」
いつの間にか家に着いてて、
東雲くんが玄関までついてきてくれる。
「もう一人で大丈夫だよ」
「……初ちゃん」
「ん?」
「一人で泣かないでね」
そう言って笑う東雲くんは、笑っているのにすごく悲しそうで。
じゃあねって去っていく東雲くんの背中が小さく見えて、
少しだけ泣きそうになった。