八木澤くんは不器用に想う
*縮まる距離と深まる溝
翌日の昼休み。
「私、飲み物買ってくるね」
「いってらっしゃい」
お財布を持って一人で教室を出る。
廊下を歩いていたら、
前から柳さんが歩いてきた。
……あ、今からA組に行くのかな。
また、八木澤くんを独り占めするんだ…。
パッと視線を逸らして、横を通り過ぎようとしたら。
「あの、安木さん?」
「…え?」
「やっぱりそうだ。
ねぇ、今から少し話さない?」
柳さんが話しかけてきて、ニコッと目を細めて笑った。