八木澤くんは不器用に想う
「……なんの用でしょうか」
人気のない階段の踊り場で
何故か私は、柳さんと柳さんのお友達と向き合っていた。
「わかってるんでしょ?
八木澤くんの件だよ」
そう言って一歩前に出たのは、柳さんじゃなくてお友達の方。
……何故、お友達の方が出てくるんだ?
「八木澤くんと花奈実は幼なじみで、小さい頃に結婚を約束した婚約者なんだよ?
邪魔するの、やめてくれない?」
「え…?」
後ろにいた柳さんを見たら、
クス、と面白そうに笑った。
「ごめんね。
怜央がちょっかいかけてるみたいだけど、
安木さんのことは何とも思ってないから」
「……そんなの、八木澤くんから聞いてないし…」
それが本当のことだって証拠もない。
「怜央は自分の恋バナを、ただの友達に話すような人じゃないから」
「……」
婚約者って…
そんなの……嘘だ。