八木澤くんは不器用に想う
後悔したのと同時に
左の頬に鋭い痛みが走った。
「健康に生まれた自分が悪いんじゃん」
冷たい瞳で私を見て、
柳さんは私の頬を叩いたその手をぷらぷらと揺らした。
「あーあ。手ー痛ぁい」
「……なにしてんの?」
頬を叩かれて放心している私の耳に、
彼の声が聞こえた。
「怜央!」
階段の上からこっちを見下ろしていて。
本当に今来たみたいで、びっくりしながら階段を駆け降りてきた。
「なにやってんの?」
八木澤くんは私と柳さんの間に立って、
私に背を向けて、柳さんと向き合っていた。
「……お前、安木のことぶった?」
「……違うの怜央!
安木さんが、あたしに『体が弱くていいね』って言うから…!
あたしだって健康に生まれたかったのに、そんな言い方ひどいって思ってカッとなって…」