八木澤くんは不器用に想う
教卓の前に並んで順番を待って、
自分の番が来て、中から紙を一枚取った。
席に戻らないで立ったままその折り畳まれた紙をピラッとめくったら、
『30』って書かれていた。
30番…
黒板に書かれた座席表を見て確認すると…
廊下から二列目の、一番後ろの席だった。
えっ!めっちゃいい席!
ガッツポーズするのと同時に、
パッと持っていた紙が誰かに奪われた。
「……30番。
へぇ、わりといい席だな」
「あっ…!」
ニヤ、と口角を上げた彼。
「…あげないよっ!
返して!」
「別にこんな紙クズいらねーよ。
俺くじ運いいから、お前よりいい席とるに決まってんじゃん」