八木澤くんは不器用に想う



「知ってる」って呟いたのに


何故か消しゴムを見つめたまま、返してくれない八木澤くん。




「あの…消しゴム」



「……はぁ…」




私がもう一回声をかけると、


八木澤くんは悲しそうなため息をついて、私の手に消しゴムを乗せた。




「………」




手の上に乗った、割れた消しゴムを見て


あー…と自分で納得した。



たぶん、呆れたんだ。



割れた消しゴムなんて使ってるから…物を大切にしない奴なんだって。



……きっと、柳さんとは大違いなんだ。



また一つ、八木澤くんに嫌われてしまったな…って、反省しながら席についた。




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