八木澤くんは不器用に想う
……せ、せまい。
言われるがまま、八木澤くんと2人でトンネルの中に。
もちろん高校生2人で入るものじゃなく、中は狭くて窮屈だった。
「……ここでしばらく雨宿りするか」
「……おさまるかもわかんないのに、
雨宿りしても意味ない」
また可愛くない言葉が飛び出す。
そんな時でも
近くに感じる八木澤くんの息に、ドキドキしてしまう。
「……安木」
狭い空間。近い距離。
すぐ近くで聞こえる声に、ドクン、と心臓が暴れだす。
雨に濡れて顔にまとわりつく髪を、八木澤くんの指が優しく避けた。
「……!」
その時の八木澤くんの瞳が、すごく熱っぽく見えて。
思わず膝に顔を埋めるようにして顔を隠した。