八木澤くんは不器用に想う



……幼なじみって言ってた。


もう何年もずっと、柳さんに片想いしてるってこと…?




「あっちも緊張感とかあるだろうし、
試験終わってから話しかけようって思ってたのに、
その子、終わったらすぐ帰っちゃって。
借りたものも、返せないままでさ」



「…借りたもの?」




ていうか…試験?


試験の時に柳さんに初めて会ったってこと?



……何歳の頃の話?




「……消しゴム。
貸してくれたんだ、その子が」



「……」



「その消しゴムに、
『すき』って書いてあってさ。
俺、めちゃくちゃ舞い上がって。
なのに返す前に帰っちゃうし
また会える保証もないし…
しばらくの間、柄にもなく恋焦がれてたっていうか…
……ハハッ。ダサいよな」



「別にダサくないけど…」




柳さんにそこまでの想いを寄せてたって聞かされるのはめちゃくちゃ嫌で、顔を上げられなかったけど、



ダサいところなんて別にないから思ったことを言ったら、八木澤くんが照れくさそうに首を掻いた。




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