八木澤くんは不器用に想う
恋に落ちた八木澤怜央
……やばい、やばい。
消しゴム、忘れた!!
……どうしよう。入試で消しゴム忘れるなんて最悪だ。
絶対間違えれない…!!
テスト用紙が手元に来る前からとんでもない壁がぶち当たって、
なんだかお腹が痛くなってきた…。
もうテストの時間が迫ってる。
どうしよう、と焦っていたら
隣から『あの』って声が聞こえた。
「なにか、探してるんですか…?」
「え、あ…、
消しゴムを、忘れてしまったみたいで…」
隣の席の女の子が、心配そうに俺に言う。
……大事な受験なのに、消しゴム忘れるなんて、緊張感のないヤツだと思われたかな。
恥ずかしい、と顔を俯かせたら、
隣から伸びてきた手が、俺の机にポン、と消しゴムを置いた。