八木澤くんは不器用に想う
*
「わかんないよ〜。
初パパがいないのを良いことにつけいるヤツがいるかもね?」
学校に着いて、同じクラスの友達の岡部莉乃にお父さんに言われたことを話したら、そんな答えが返ってきた。
「そんな人いないよ」
「いるじゃん。
八木澤」
「え、八木澤くん?」
「昨日も誘われたんでしょ?」
そっか。昨日「用事があるから」って莉乃は先に帰っちゃってたから、八木澤くんがどう誘ってきたか知らないんだ。
「誘われたって、
アイス食べに行っただけだよ」
「だからそれ、デートじゃん?」
「いや、デートじゃな「デートじゃねぇから!!」
私の席で話してたら、
私の声を遮る大きめの声とともに、
隣の席にボスッ!と大きな音をたててカバンが置かれた。