八木澤くんは不器用に想う
2人を交互に見ていたら、
莉乃を睨んでいたはずの八木澤くんが、私のことをチラッと見て。
「……う…」
顔が真っ赤なのがよっぽど恥ずかしいのか、
静かに自分の席に座って、机の上に置いていたカバンに顔を埋めた。
「……八木澤くん、大丈夫?」
相当顔赤かったけど、
熱でもあるのでは?
心配になって声をかけてみたけど
八木澤くんから返事はなかった。
……無視?
なんか感じ悪い。
あ、そうだ。
今なら昨日のアイス代、受け取ってくれるのでは?
私の財布の中からお金を取り出して、それを八木澤くんの机に置いたら、
八木澤くんがバッと顔をあげて。
置いたお金を握るとそのまま私の机に返してきた。
「……昨日のは、俺に付き合わせただけ。
デートじゃない」
「うん。だからお金…」
「でも、それは絶対受け取らない」