八木澤くんは不器用に想う
そう言って、まだくじを引いていなかった彼は友達と一緒にわいわい喋りながらくじを引く。
「………」
数字を確認した彼は、クシャッと紙を握りつぶすと、
チラッと私の方を一瞬だけ見てきて…
「……?」
すぐにパッと視線を逸らされ、友達とお喋りし始めた。
……なんだったんだろ?
不思議に思いつつ、みんなが机を移動させ始めたから私も移動させる。
30番の位置に机を置いて、
移動してるみんなの邪魔にならないように座らずに立っていると。
「……よぉ。
偶然だな」
そう私に声をかけてきて私の隣に机を置いたのは、
さっき私の紙を奪った彼、八木澤怜央くんだった。