八木澤くんは不器用に想う
「怜央、貸してたノート返して」
「……」
どうやら東雲くんは八木澤くんに用があったらしい。
八木澤くんは私には絶対顔を見せたくないのか、私に背を向けてカバンをあさり始めた。
「……はい」
「お前…ノート折れてんだけど!」
たぶんさっき、カバンに顔埋めてたせいで中のノートが折れちゃったんだろう。
東雲くんは真ん中にくっきり折れ目がついてしまったノートを丸めて、ポコポコと八木澤くんの頭を叩いた。
「痛っ!
今角当たったんだけど!?」
「人に借りたもん粗末に扱うなバカ」
「お前も雑な扱いしてんじゃん」
「俺のだからいいだろ」
ぐしゃぐしゃと八木澤くんの髪を乱して楽しそうに笑う東雲くん。
さっき私に向けた笑顔より、ずっと自然で、男の子って感じで…
さっきの笑顔より、いいなって思った。