八木澤くんは不器用に想う
なんで相手が怒ってるのかわからない。
だから刺激しないように、あの時と同じようにパッと視線を逸らして下を向いた。
「ん?どしたの初。
急に下向いちゃって」
「え?
あ、いや、なんでもない」
「なんでもないって…あ」
莉乃が八木澤くんの方を見て、『あ〜』と呑気な声を出しながら両手で頬杖をつき、
ニッと口角を上げて不敵な笑みを浮かべた。
………なんか、
嫌な予感が…。
「今日、初パパ帰るの遅いらしいから、
初の家で勉強会でもしようよ。
東雲くんと八木澤もどぉ?」
天使なのか悪魔なのか、かわいい顔しながら中に黒いものが見えるような笑顔に、八木澤くんが『う゛…』と顔を引き攣らせた。
「な、なんでいきなり勉強会なんか…」
「東雲くんのノート丸パクリしても脳ミソに入ってないからじゃん?」
「余計なお世話じゃ!!」