八木澤くんは不器用に想う
八木澤くんはカバンだけリビングに置いて、私についてキッチンに来た。
「一人で大丈夫だよ?」
「……ちょっとくらい、なんかさせろよ」
「………あははっ」
いつも意地悪な八木澤くんからそんな言葉が出るなんておかしくて。
思わず笑ったら、
八木澤くんに頬をつねられた。
「なに笑ってんだよ」
「アイスの時も思ったけど、
八木澤くんが優しいの、なんかおかしくて」
「はぁ?
……優しいとそんな変かよ」
「うん、変!
変わってる」
似合わないっていうか、
私に優しくするなんて、変わってる。
いつも意地悪してくる八木澤くんに、可愛いこと一つ言えたことないから。
私に優しくするメリットなんてないのに。変なの。