八木澤くんは不器用に想う
「え……」
「なんだよ。
俺が隣じゃ嫌かよ」
「なにも言ってないじゃん」
私の隣の席。一番廊下側の、一番後ろ。
たしかに、言ってた通りくじ運はいいらしい。
「本当にくじ運いいんだね」
「………まぁな」
……ん?
なんか、変な間が?
「……あ!
誰かに交代してもらったんでしょ?
実は一番前とかだったんじゃないの〜?」
「はぁ?嫌な席なら交代してくれるわけねぇだろ。
良い席を譲ってやったんだよ」
やっぱり交代してるじゃん。
「窓側の一番後ろの席を譲ってやったの」
「なんで譲ったの?
どっちも一番後ろで良い席なのに」
そんなに変わらなくない?