八木澤くんは不器用に想う
……ところで、“ごき”とは…?
不思議に思って安木の後ろを見ると、小さな黒い物体が落ちてるのが見える。
この距離で、なんとなくそれがなんなのかわかった。
………なるほど、それにびびったわけね。
安木は、普段あんまり表情を崩さないから、
弱点なんかないんだろうなって思ってた。
でも、やっぱり苦手なものはあるんだな。
それがわかると、
なんかすっげぇ愛しいな…。
まだぎゅっと強く俺を抱きしめる安木の頭を撫でようとしたら
どこからか視線を感じて、手をピタッと止めた。
パッとキッチンの入り口のドアを見たら、
ドアの隙間から、ニヤニヤしながら覗いている、岡部と目があった。
……あのヤロー。
絶対この後、死ぬほどネタにされる。