八木澤くんは不器用に想う
それより、なんとか安木を安心させてあげなければ、ともう一度その黒い物体を見る。
だがヤツは全く動く気配がない。というか、動いてない。
よく見てみたら、それがおもちゃであることがわかった。
「…安木」
「……っ」
「あれ、おもちゃだから、
大丈夫」
「へ…?
おもちゃ…?」
顔を上げて、もう一回それに目を向ける安木。
それが動かないことを確認すると、「はぁ〜〜」と壁によりかかるようにへたり込んだ。
「よ、よかったぁ…。
八木澤くんたちが来てるのに本物がいたらどうしようかと…」
「部屋が汚いってバカにされると思った?」
「そうだよ!
ていうか今したでしょ!?」
すっかりいつもの調子を取り戻した安木は、む、と頬を膨らませて怒ってる。かわいい。