八木澤くんは不器用に想う
「……こっちの方が
遅刻した時目立たない、から」
「えー。
それ、譲って“あげた”んじゃなくて、譲って“もらった”んじゃん」
クス、って笑ったら、
肩にトンッと何かがぶつかった。
「自惚れんな、バーーカ!」
え?何が自惚れ?
言ってることはよくわかんなかったけど、どうやら八木澤くんが何かを投げつけてきたようで、
私の肩にぶつかったものが、ポトリと床に落ちた。
「落ちたよ」
「受け止めないお前のせいじゃん」
「投げた八木澤くんのせいだよ」
落ちたそれを拾って、八木澤くんの机に置いてあげた。
「消しゴムは人にぶつけるためにあるんじゃないよ。消しゴムくんがかわいそう」
「なに、消しゴムくんって。
メルヘンかよ。きも」