八木澤くんは不器用に想う








「……うん、そう。
…そうそう、合ってるよ」




隣で私のノートを見ながら、私が問題を解くのを見ている東雲くん。



スパルタかと思いきや、東雲くんは結構優しく教えてくれて、しかもかなりわかりやすくて。




「先生!出来ました!」



「すごい。正解です」



「やったー!」




解けることが気持ちよくて、数学好きになっちゃうかも。



おまけに先生と生徒ごっこにもノッてくれるし。


こんなに勉強が苦じゃないの、初めて。




「東雲くん、教えるの上手だね」



「そう?ありがとう」



「あ、これは?
どうやって解くの?」



「どれ?」




東雲くんが私の教科書を覗き込もうとした時、


私と東雲くんの間に、遮るようにノートがトン、と置かれた。





< 53 / 286 >

この作品をシェア

pagetop