八木澤くんは不器用に想う
玄関先で話して、莉乃と東雲くんが手を振って歩き出す。
八木澤くんもついていくかと思ったのに
八木澤くんは私の前に立って、じっと私を見つめた。
「八木澤くん?どうしたの?
2人とも帰っちゃうよ」
「……あのさ」
「うん?」
「か、かわいいって言ったの、
…世辞じゃねーから」
「……へ…?」
「安木は、かわいい…と、思う…。
ほ、ほら、孝弥も好みっつってたし、
い、一般的には、かわいいと思う!
あっ…い、“一般的には”だからな!?
俺は別に、ふ、普通だと思うけど!!」
『そんだけ!じゃーな!』と言うとフイッと私に背を向けて歩き出す八木澤くん。
……隠したかったのかもしれないけど、見えちゃった。
八木澤くん、耳赤かった。
よっぽど人を褒めることに慣れてないんだろう。
「……不器用」
そういう私も褒められることに慣れてなくて。
外の風は冷たかったのに、顔だけはすごく熱かった。