八木澤くんは不器用に想う
「あたしは着てくかも。
初は?」
「私も着たい」
「だってさ、八木澤」
「……、ふーん」
八木澤くんがそう呟いて、プイッとそっぽ向く。
何か変なことを言ってしまっただろうかと首を傾げたら、ポンと肩をたたかれた。
「お祭りで浴衣着るって本当?」
「東雲くん」
肩をたたいたのは東雲くんで、ニコニコしながら話に混ざってきた。
どうやらさっきの話を聞いてたみたい。
「浴衣っていいよね。
安木さんの浴衣姿、絶対かわいいと思う」
「……うわ」
東雲くんの口からサラッと。もうホント、息をするようにサラッと出た言葉に、思わずひいてしまった。