八木澤くんは不器用に想う
こういうとこ見ると、チャラいなと思ってしまうね。
「……なんか安木さん、怒ってる?」
「いや全然」
「眉間にシワが寄ってるよ」
笑顔を崩さないまま、人差し指で私の眉間を押してくる。
……八木澤くんといる時の東雲くんと、笑顔が違うんだよね。
私に向ける笑顔は、自然じゃない…。
その笑顔は、あんまり好きじゃない。
「東雲くんも、お祭り来るの?」
「一緒に行ってもいいの?」
「うん。
その時、勉強教えてくれたお礼させて!」
力強く、拳を握って東雲くんにそう言ったら、
東雲くんが一瞬びっくりした顔をして。
「……、
わかりました」
眉を下げて、ちょっとだけ困ったように笑った。
その笑顔は作り物っぽくなくて、好きだなって思った。