八木澤くんは不器用に想う
私の前髪を指で掬う八木澤くんと、パチッと目があった。
「そうなの、今日美容院行って…」
……びっくりした。
髪アレンジしてもらって、いつもと違うから
莉乃だって、『髪かわいくセットしてるねー!』って言っただけだったし…
まさか前髪を切ったこと気付かれるとは思わなかった。
「アレンジしてるから、
前髪切ったことなんて気付かれないと思ってた…」
「あー…なんかいつもより顔がハッキリ見えた気がしたから」
「そ、そっか…。
あっ、これ、変じゃない?」
「え?」
「短くすると顔が隠せないから
なんか落ち着かなくて」
顔を隠すように額を押さえたら、
八木澤くんにぎゅっと手を掴まれた。