八木澤くんは不器用に想う
「え…」
「……」
「八木澤くん…?」
私の手を横に避けて、
八木澤くんと目が合う。そして。
「……前髪切りすぎたの?
って思うくらい、だっせぇ」
「……へ?」
飛んできたのは、そんな意地悪な言葉だった。
「……普通の長さなんだけど」
「普通じゃねーよ。
そんなんじゃモテねーって」
前髪をくしゃくしゃと乱されて、ムッと唇を尖らせた。
「…別にモテたいわけじゃ」
「安木はハッキリ顔見せねー方がいいんだよ。
…………安木がかわいいってこと、みんなにバレちまうだろうが」
「……え?なに?」
「なんでもねぇよ!」
後半聞き取れなかったんだけど、なんでもないって言うから別に聞かなくていいことかな。
首を傾げる私を見た後、『さっさと行くぞ!』と言ってお祭り会場の方へ歩いて行く八木澤くん。
莉乃と東雲くんも八木澤くんを見て不思議そうな顔をしてたけど、
何も言わずに八木澤くんに続いてお祭り会場に向かった。