八木澤くんは不器用に想う
「さすがに人が多いねー」
「はぐれないように気をつけないと」
「岡部さん、俺の腕掴んでていいよ」
「わー慣れてるね」
屋台が並ぶお祭り会場に着くと、
いつの間にか莉乃と東雲くんが八木澤くんの前を歩いてて
八木澤くんは私の隣を歩いていた。
「あ、安木さんも俺と手繋ぐ?」
「え?あー…」
東雲くんが急に後ろに振り向いたかと思ったら、そんなことを言ってきた。
あー……莉乃と同じ感想が出そうだ。
「いや、はぐれないように気をつけるから大丈…」
「安木は俺が掴んどくから大丈夫」
東雲くんの申し出を断ろうとしたら、
八木澤くんが私の腕を掴んだ。
……のは、いいんだけど。
「八木澤くん…
二の腕を掴むのはやめてほしいです…」