八木澤くんは不器用に想う



……入学してからずっと、


俺ばっかり好きなのが、悔しくて。



気付けば、話しかけるきっかけに、思ってもないことばっかり口にしてた。



孝弥みたいに、安木のことはすごく甘やかしたいのに


全然動じない安木を見ると、どうにもそれが出来ない。



甘い言葉を吐いても、通じない。



そんなの、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん。



……あ、でも


勉強会の時、
「かわいい」って言ったら、照れてたよな。



今日の浴衣だって…




「……安木」



「ん?」



「……かわいい」




ボソ、と呟いたら、



安木がぱあっと目を輝かせた。




「やっぱりかわいさに気付いた!?

かわいいでしょ!にゃんこさん!」



「……は?」



「あ、でももう私がもらったから、
ちょうだいって言われてもあげないよ?」




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