八木澤くんは不器用に想う




次行くぞって言ったのはいいけど、


安木はあと、どこに行きたいんだろう?



聞こうと思って、左手をキュッと握ってみる。が。


もちろん何も握った感触はない。



しまった。


手、繋ぎ忘れた。



パッと後ろを振り返ったら、



ドンッと誰かが俺にぶつかった。




「あっすいませ…」



「いきなり止まんないでよね!!」




ぶつかったのは、同じ高校生くらいの女の子。


安木と違って強気そうで、めんどくさそうなのに絡まれた、と思った。



しかも安木いねーし…。小さいから、はぐれたら見つけにくいってわかってたのに。


なんでちゃんと手繋いでおかなかったんだよ、俺のバカ。




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