風に揺られる幾許もない灯
「琥珀ちゃん!」
いつものように本を読んでいると、結名さんの声が聞こえた。
「時間ですか?」
私は自然と笑った。
「ええ、そうよ」
結名さんはそんな私を嬉しそうに見つめ、笑顔を返してくれた。
これだけで二人には伝わる楽しい時間
個室で過ごす息苦しい生活の気分転換になる、近所の公園への散歩だ。
❁❁❁
「見て、琥珀ちゃん。天気がいいわ」
結奈さんの言葉で空を見上げる。
今日は雲一つない青空だ。
(珍しいな…ここ一週間位はずっと雨だったのに)
風も心地よく、過ごしやすい気温だ。
「天気予報では暖流と寒流がぶつかった影響で梅雨前線や風が起こり、特別警報級の雨が振り続けた。これを人々は『小さな台風』と呼び、この現象について専門家は…確か…」
「また難しい事考えているのね、熱心に勉強した結果楽しいならよかったわ」
結名さんは少し呆れ気味にそう言って、スマホの天気予報を確認していた。
勉強が楽しいと言えるかどうかは微妙だ。
ただ、暇だったので幼馴染から借りた教科書を読んでいて、この世界に興味を持ったのだ。
する事が無い為、結名さんのお母さん(教師)から勉強を教わるのは暇潰しにもなるし色々な事を知れるので興味深くて熱中してしまった。
まぁ、これを幼馴染に言っても欠片も分かってくれないのだが。
「それにしても、琥珀ちゃんの時位しかここには来ないから、外の空気を味わえていいわね」
「結名さん…看護師の仕事のお世話だけでなく社畜のように業務に励むのはやめてください」
「あら、心配してくれるの?優しいわね、一緒にいると癒やされるわ」
「それはどうも…それより引き籠もるのもやめてください、体力落ちたら仕事に支障が出るでしょう?」
「琥珀ちゃんに指摘されるほど音痴ではないわ!大丈夫よ、私は病院でいつも走り回ってるから」
「走り回らないでください!足音が結名さんだって分かるようになっちゃいましたよもう…」
「ふふっ気をつけるわ」
「と言いつつお医者様からのお願いをなんでも引き受けるのはどうなんでしょう…」
ため息をつくと、せっかくの散歩で落ち込んだらだめよ、と言って公園を見回した。
あなたが原因ですが…と思いながらも、私も前方を見渡す。
ここの公園は学校のグラウンド位の大きさで、遊具は少ない。
なので子供も他の公園に比べたらそんなに多くはないが、とても楽しそうな声が沢山聞こえてくる。
もし健康な体なら
こんな未完成な体じゃなければ
私はどのように過ごしていたのだろう……
「もし私が入院していなかったから、どんな生活をしてたのかな」
ぼそっと言った言葉を結奈さんが聞き取り、反応した。
「そうね…私も体弱かったからあまり想像出来ないけれど、小学生の時は友達と鬼ごっこしたり、花壇のお花の種類を本で調べてたわ」
お花の種類を調べる…
病院の花壇のお花、調べてみようかな
お見舞いでもらうお花がいつも綺麗だから、少し気になってたんだよね
「鬼ごっこ……か」
ちょうど近くで遊んでいた小学生のボールが転がってきた。
私が座っていた車椅子にぶつかる。
拾うと、小麦色の肌の男の子が駆け寄って来た。
「はい」
笑みを浮かべて渡す私に、彼は笑顔で
「ありがとうございます!!」
と元気に挨拶し、友達の方へ走って行った。
それを見つめる私の視線に気付いたのだろう。
結奈さんは悲しそうに見つめていた。
いつものように本を読んでいると、結名さんの声が聞こえた。
「時間ですか?」
私は自然と笑った。
「ええ、そうよ」
結名さんはそんな私を嬉しそうに見つめ、笑顔を返してくれた。
これだけで二人には伝わる楽しい時間
個室で過ごす息苦しい生活の気分転換になる、近所の公園への散歩だ。
❁❁❁
「見て、琥珀ちゃん。天気がいいわ」
結奈さんの言葉で空を見上げる。
今日は雲一つない青空だ。
(珍しいな…ここ一週間位はずっと雨だったのに)
風も心地よく、過ごしやすい気温だ。
「天気予報では暖流と寒流がぶつかった影響で梅雨前線や風が起こり、特別警報級の雨が振り続けた。これを人々は『小さな台風』と呼び、この現象について専門家は…確か…」
「また難しい事考えているのね、熱心に勉強した結果楽しいならよかったわ」
結名さんは少し呆れ気味にそう言って、スマホの天気予報を確認していた。
勉強が楽しいと言えるかどうかは微妙だ。
ただ、暇だったので幼馴染から借りた教科書を読んでいて、この世界に興味を持ったのだ。
する事が無い為、結名さんのお母さん(教師)から勉強を教わるのは暇潰しにもなるし色々な事を知れるので興味深くて熱中してしまった。
まぁ、これを幼馴染に言っても欠片も分かってくれないのだが。
「それにしても、琥珀ちゃんの時位しかここには来ないから、外の空気を味わえていいわね」
「結名さん…看護師の仕事のお世話だけでなく社畜のように業務に励むのはやめてください」
「あら、心配してくれるの?優しいわね、一緒にいると癒やされるわ」
「それはどうも…それより引き籠もるのもやめてください、体力落ちたら仕事に支障が出るでしょう?」
「琥珀ちゃんに指摘されるほど音痴ではないわ!大丈夫よ、私は病院でいつも走り回ってるから」
「走り回らないでください!足音が結名さんだって分かるようになっちゃいましたよもう…」
「ふふっ気をつけるわ」
「と言いつつお医者様からのお願いをなんでも引き受けるのはどうなんでしょう…」
ため息をつくと、せっかくの散歩で落ち込んだらだめよ、と言って公園を見回した。
あなたが原因ですが…と思いながらも、私も前方を見渡す。
ここの公園は学校のグラウンド位の大きさで、遊具は少ない。
なので子供も他の公園に比べたらそんなに多くはないが、とても楽しそうな声が沢山聞こえてくる。
もし健康な体なら
こんな未完成な体じゃなければ
私はどのように過ごしていたのだろう……
「もし私が入院していなかったから、どんな生活をしてたのかな」
ぼそっと言った言葉を結奈さんが聞き取り、反応した。
「そうね…私も体弱かったからあまり想像出来ないけれど、小学生の時は友達と鬼ごっこしたり、花壇のお花の種類を本で調べてたわ」
お花の種類を調べる…
病院の花壇のお花、調べてみようかな
お見舞いでもらうお花がいつも綺麗だから、少し気になってたんだよね
「鬼ごっこ……か」
ちょうど近くで遊んでいた小学生のボールが転がってきた。
私が座っていた車椅子にぶつかる。
拾うと、小麦色の肌の男の子が駆け寄って来た。
「はい」
笑みを浮かべて渡す私に、彼は笑顔で
「ありがとうございます!!」
と元気に挨拶し、友達の方へ走って行った。
それを見つめる私の視線に気付いたのだろう。
結奈さんは悲しそうに見つめていた。