風に揺られる幾許もない灯
私はしたい事が無く、勉強したり本を読む日々を過ごしていた。

あと少しで死ぬけれど、したい事が無いから勉強した。

体が動かせないなら、頭を働かせないといけない。

いくら死人予備軍だとしても何も出来ない無能に点滴なんて無駄な事。

それに勉強出来れば、皆喜んでくれるでしょう?



コンコン

「琥珀ちゃん、外出の時間よ」

「あ、はい」

入院してから時々、結奈さんが外に連れ出してくれる。

それは私が無感情になってからもそうだった。

花は見ていて癒される

………と思う。



だから、先生達に喜んでもらう為に花を観察する事にハマった。

あとは何気ない幸せを先生に伝えたら喜ぶから、景色を眺めたり、私は自由に時を過ごした。

「最近花について詳しくなったね」

「はい、沢山調べたので。この色、凄く綺麗………なんだろうな」

そっと画像の花を指でなぞる。

一つ、図鑑以外で見かけない色の花を見つけた。

それでも私はそれが綺麗なのか分からない。でも濁った色じゃないから綺麗だと思った。

「本当ね!これ、病室に飾る?私気に入っちゃった」

結奈さんは嬉しそうで、ノリノリで私に聞く。

「結奈さんの分も持ちますね」

手元に花を持ってきてもらい、それを受け取る。

前から足が不自由だったが、病気の進行により全く動かなくなった。

元から体は弱かったし運動が出来なかったから、走れないのも歩けないのも何の害もないけれど。

ただ生きる時間が減っただけ……。
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