風に揺られる幾許もない灯
「綺麗な音……」
花を眺めていると、ふと結奈さんが呟いた。
確かに、遠くでフルートの音色が聴こえる。
楽器ってこんなに綺麗な音が出るんだなぁ…にしても綺麗な音が出せる人も尊敬する。
私の友達曰く、息の音が聞こえるとか、そもそも楽器の相性的に音が出せない事がある、アタシも木管憧れたけど音全く出なかったわ笑笑
なんて笑ってたっけ。
ぼんやりと考えながら音色の方へ振り向くと、そこには私と同じ年位の男の子が演奏していた。
私と結奈さんがずっと見つめているからか、視線に気づき、こちらを向いた。
優しそうな顔…
今まで色んな人に色んな感情を向けられてきたから分かる。
この人はいい人だ。
目に見透かそうとしている濁りが全く見えない。
澄んだ目をしている、目がそう語っている。
男の子はふわりと性格良さそうな笑みを浮かべ、空気に溶けていきそうな、まるでフルートみたいな綺麗な声を発した。
「今、楽器の練習をしていたんです。リクエスト曲があれば吹きますよ」
そしてにこりと私と結奈さんを交互に見つめる。
やはり予想通り優しい子だ。
しかし私は音楽に興味がなければ聴く事もない。
そう言われても何も曲の案が思い浮かばない。
「私、全然曲知らない……」
曲を聴いても何も感じない…
心に響かないというか、作曲者に伝えたい思いがありメッセージを送ってきてるのは分かるけど曲を聴いて切ないとか楽しいといった感情が一切感じられない、つまり音楽はつまらないのだ。
「あら、そうなの?凄く演奏が上手くて聴き惚れてしまったわ」
急に話しかけられた事に驚き困惑する私をよそに、気がつくと結奈さんはイケメン(らしい)な男の子に顔を火照らせていた。
「じゃあそうね……悲しそうな音なのに元気になれるような曲、あるかしら」
難しい事を言うな…というか、結奈さんなら最近よく聴いていた曲をリクエストすると思ったんだけど、なんで明確に言わないんだろう?
「うーん…よし、楽器を変えるか。少し待ってください」
男の子は何かを決めると、いそいそとフルートを直し始めた。
「分解出来るんだ…」
「はい。フルートは3つに分解しますよ」
思わず心の声が漏れると、男の子は優しい笑顔で言葉を返した。
そして、小さな四角いものから竹を取り出し、咥えた。
「……?何故竹を?」
そう聞くと竹を口から離しながら
「この竹を湿らせて楽器につけるんです。そして今から吹く楽器は、この竹を振動させて音を鳴らします」
すると棒とガーゼを巾着袋から取り出し、ガーゼを棒に巻きつけ始めた。
「何をしているんですか?」
私がそう尋ねると
「楽器の手入れです。一日でも欠かすと、楽器が錆びて汚れて、音色に支障が出て壊れやすくなってしまうのです」
そう言いながらガーゼを巻きつけた棒をフルートの穴に出し入れしていた。
私はちらりと公園の時計を見つめる。
(あと30分……)
外に出れる時間は限られているし、こんなにサービスした上で手間を取らせているの申し訳ないな……
それに、他にもコップに入れた水に竹を入れたり、四角い機械で音を調整したり沢山聞いたのに、こんなに親切に詳しく教えてくれるんだもの。
何かお手伝いできないかな……
あっ、これなら私でも…でもいいのかな。
個人的にいいと思った案を、私はダメ元で聞いてみることにした。
「…とても大切なものなのは承知の上で、時間がかかりそうで大変そうなので私もお手入れしてみたいです」
勇気を出して言ってみると、男の子は一瞬目を見開いて驚き、満面の笑みを浮かべ
「いいですよ。今している事をお願いしてもいいでしょうか?」
「はい、勿論です」
そっと渡された楽器に触れると、吹き終えてから時間が経っていたからなのかひんやりとした温度が体温に伝わった。
よく見てみても傷や汚れが見当たらない。でも、こんなに大切にしているという事は結構前から使っていたのかな…
慣れない手つきでしていたのに、男の子は嬉しそうに私を見つめる。
「嬉しいです、大切に扱ってくださって。…高い楽器の大切さを分からない人は多いので」
男の子は悲しそうに目を伏せた。
「貴方が大切そうにしていたので、そう扱うべきだと思いました」
「ふふっ、ならお礼も含めて、頑張って吹きますね」
「はい」
❁❁❁
結奈side
琥珀ちゃん、あれで笑ってくれるかなと期待したけど、、
控えめに微笑む笑顔が本物とは思えなかった。
人の事を考えてちゃんと見ているから、相手に善意や好意を向けられたら答えるし笑顔も向ける。
ただ、相手に気づかれないようにそっと笑みを消す。
傍でずっと見守っていた私は、彼女の心の闇も知り尽くしていた。
いつか、心から笑える日が来たらいいな、、
青春を桜花できる年齢で病気によって呆気なく奪われ、笑顔で生きることさえ出来ないまま終わるなんて酷いにも程がある
楽器吹きのイケメンくんには、少しでも心が動くだろうかという期待を込め、琥珀ちゃんの好きそうな雰囲気の曲をリクエストした。
楽器に感心がある事に驚いたけど、これは逃せないチャンスよね!
私は見た目だけで判断したわけじゃないのよ!!()
花を眺めていると、ふと結奈さんが呟いた。
確かに、遠くでフルートの音色が聴こえる。
楽器ってこんなに綺麗な音が出るんだなぁ…にしても綺麗な音が出せる人も尊敬する。
私の友達曰く、息の音が聞こえるとか、そもそも楽器の相性的に音が出せない事がある、アタシも木管憧れたけど音全く出なかったわ笑笑
なんて笑ってたっけ。
ぼんやりと考えながら音色の方へ振り向くと、そこには私と同じ年位の男の子が演奏していた。
私と結奈さんがずっと見つめているからか、視線に気づき、こちらを向いた。
優しそうな顔…
今まで色んな人に色んな感情を向けられてきたから分かる。
この人はいい人だ。
目に見透かそうとしている濁りが全く見えない。
澄んだ目をしている、目がそう語っている。
男の子はふわりと性格良さそうな笑みを浮かべ、空気に溶けていきそうな、まるでフルートみたいな綺麗な声を発した。
「今、楽器の練習をしていたんです。リクエスト曲があれば吹きますよ」
そしてにこりと私と結奈さんを交互に見つめる。
やはり予想通り優しい子だ。
しかし私は音楽に興味がなければ聴く事もない。
そう言われても何も曲の案が思い浮かばない。
「私、全然曲知らない……」
曲を聴いても何も感じない…
心に響かないというか、作曲者に伝えたい思いがありメッセージを送ってきてるのは分かるけど曲を聴いて切ないとか楽しいといった感情が一切感じられない、つまり音楽はつまらないのだ。
「あら、そうなの?凄く演奏が上手くて聴き惚れてしまったわ」
急に話しかけられた事に驚き困惑する私をよそに、気がつくと結奈さんはイケメン(らしい)な男の子に顔を火照らせていた。
「じゃあそうね……悲しそうな音なのに元気になれるような曲、あるかしら」
難しい事を言うな…というか、結奈さんなら最近よく聴いていた曲をリクエストすると思ったんだけど、なんで明確に言わないんだろう?
「うーん…よし、楽器を変えるか。少し待ってください」
男の子は何かを決めると、いそいそとフルートを直し始めた。
「分解出来るんだ…」
「はい。フルートは3つに分解しますよ」
思わず心の声が漏れると、男の子は優しい笑顔で言葉を返した。
そして、小さな四角いものから竹を取り出し、咥えた。
「……?何故竹を?」
そう聞くと竹を口から離しながら
「この竹を湿らせて楽器につけるんです。そして今から吹く楽器は、この竹を振動させて音を鳴らします」
すると棒とガーゼを巾着袋から取り出し、ガーゼを棒に巻きつけ始めた。
「何をしているんですか?」
私がそう尋ねると
「楽器の手入れです。一日でも欠かすと、楽器が錆びて汚れて、音色に支障が出て壊れやすくなってしまうのです」
そう言いながらガーゼを巻きつけた棒をフルートの穴に出し入れしていた。
私はちらりと公園の時計を見つめる。
(あと30分……)
外に出れる時間は限られているし、こんなにサービスした上で手間を取らせているの申し訳ないな……
それに、他にもコップに入れた水に竹を入れたり、四角い機械で音を調整したり沢山聞いたのに、こんなに親切に詳しく教えてくれるんだもの。
何かお手伝いできないかな……
あっ、これなら私でも…でもいいのかな。
個人的にいいと思った案を、私はダメ元で聞いてみることにした。
「…とても大切なものなのは承知の上で、時間がかかりそうで大変そうなので私もお手入れしてみたいです」
勇気を出して言ってみると、男の子は一瞬目を見開いて驚き、満面の笑みを浮かべ
「いいですよ。今している事をお願いしてもいいでしょうか?」
「はい、勿論です」
そっと渡された楽器に触れると、吹き終えてから時間が経っていたからなのかひんやりとした温度が体温に伝わった。
よく見てみても傷や汚れが見当たらない。でも、こんなに大切にしているという事は結構前から使っていたのかな…
慣れない手つきでしていたのに、男の子は嬉しそうに私を見つめる。
「嬉しいです、大切に扱ってくださって。…高い楽器の大切さを分からない人は多いので」
男の子は悲しそうに目を伏せた。
「貴方が大切そうにしていたので、そう扱うべきだと思いました」
「ふふっ、ならお礼も含めて、頑張って吹きますね」
「はい」
❁❁❁
結奈side
琥珀ちゃん、あれで笑ってくれるかなと期待したけど、、
控えめに微笑む笑顔が本物とは思えなかった。
人の事を考えてちゃんと見ているから、相手に善意や好意を向けられたら答えるし笑顔も向ける。
ただ、相手に気づかれないようにそっと笑みを消す。
傍でずっと見守っていた私は、彼女の心の闇も知り尽くしていた。
いつか、心から笑える日が来たらいいな、、
青春を桜花できる年齢で病気によって呆気なく奪われ、笑顔で生きることさえ出来ないまま終わるなんて酷いにも程がある
楽器吹きのイケメンくんには、少しでも心が動くだろうかという期待を込め、琥珀ちゃんの好きそうな雰囲気の曲をリクエストした。
楽器に感心がある事に驚いたけど、これは逃せないチャンスよね!
私は見た目だけで判断したわけじゃないのよ!!()