素直になりたい。
「おーい」

「うわ、いった...。いきなり何すんの、このドS悪魔」


またデコピンをお見舞いされた。

通算何度目?

毎回私の痛がる顔を見てニタニタ笑ってるし、櫻庭ってとことんSだ。

だから、自覚してもらうためにもはっきり言ってやった。

だが、本人に反省の色は全く見えない。


「出た、そのワード。何回言ったら気が済むの?」

「気が済むわけないでしょ。そんな日、死ぬまで一生訪れないから」


全く、最終日までこの人に絡まれるとは不幸過ぎる。

しかも席替えしちゃって、櫻庭の斜め後ろになっちゃったし。

何かと絡まれやすくなって、いい迷惑だ。

私はこれ以上櫻庭と話したくもないし、バイトがあるから帰ろうとしたのだが、やつが目の前に立ちはだかった。


「な、何?」

「ちょっと込み入った話がある。資料室に来てほしい」

「えっ?」

「いいから早く」

「えっ、ちょっ...!」


今日もまた強引に腕を掴まれた。

そして、半ば引きずられるようにして、資料室まで連れてこられる。

相変わらずほこり臭いけど、ステンドグラスから漏れる光は美しい。

別世界に来たみたいな不思議な気持ちになる。

って、そんな場合じゃなかった。

早く聞き出さないと。


「えっと、込み入った話というのは、何でしょう?」

「いいか。聞いて驚くな」


そう言うと、私の耳元に口を近付け、囁いた。



「期間限定恋人契約を結んでほしい」

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