素直になりたい。
「それにしても、やっぱり赤レンガ倉庫は素敵っ!この建築美といったら、もう最高!それに中に入っている雑貨屋さんも素敵なのよね~」


朝からハイテンションなのは、もちろん黒柳さんだ。

今日は英国の女学生のようなスタイルだけど、これから向かうところは中華街。

この格好は確実に浮く。

それに一緒に歩く私達も変な目で見られる予定。

それは嫌だなぁ、なんて思いながらも今日でひとまずは終了だから、辛抱する。


「あっ!もう11時になったよ。そろそろ向かわないと」

「あぁ、もう少し見たかったぁ。どうして楽しい時はこんなに時間が経つのが速いんでしょう?」


そんなことを言っているのは黒柳さんだけ。

皆最終日ということもあり、若干顔が疲れている。

それもそのはず。

いつ私と櫻庭が恋人ではないとバレるか分からないという緊張感の中、過ごして来たのだから。

生田くんと千咲ちゃんには普通のデートをさせてあげたかった。

本当にごめんなさい。

でも、それもこれも

全部、終わるから。

終わらせるのはもちろん、

私の役目だ。

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