素直になりたい。
「いやぁ、食べた食べた!美味しかったぁ」


生田くんがわざとらしく、お腹をぽんと叩く。


「当然です。ここはおじさまが経営している本場の料理人しかいない、大変に本格的で本格的で本格的な料理店なのですから」


今日も語彙力のない不思議な日本語を話している黒柳さんの後ろにある時計を見つめる。

ゆっくり時間をかけて食べたから、時間は14時28分。

そろそろ、だ。


「そういえば、皆様この後はどうされます?一応東京駅に19時着と致しましても、まだ3時間ほど観光出来ますが」


よし、今だ。


「じゃあ、こうしましょう。ここからは二手に別れて行動です」

「二手とはどういう?」


私は櫻庭に視線を向けた。

櫻庭も何かを感じ取ったようで、こちらを見つめる。

何度見ても吸い込まれそうになる大きな瞳。

片目くらい、吸い込まれてたかもしれないけど、

もうそんなことはなくなる。

だって、ここで......


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