素直になりたい。
「櫻庭は15時までに山下公園噴水広場前に行って」

「は?何いきなり。意味分かんないんだけど」


あぁ、もう、じれったい。

本当は分かってるでしょ。

私は櫻庭の席まで行って腕を掴んだ。


「立って」

「痛い。離せ」

「うるさい。本当は分かってるくせに。ぐずぐずしないで行ってこい!櫻庭のこと、待ってる人がいるの!男なら待たせちゃダメだから!」

「そうそう。待たせるのはご法度だね」


生田くんも加勢して櫻庭を立たせる。


――バンッ!


背中を思いきり叩いてやった。


「分かった。行ってくる」


櫻庭はリュックを背負い、駆け出した。

最後に見た横顔は、

やはりどんな瞬間よりも

キラキラして

眩しかった。

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