素直になりたい。
「やっぱりそういうことか」


匠望くんが私に視線を送ってきた。


「鷲尾先輩は兄のカノジョではありませんよね?」


はっきり言われた。

そう。

その通りだよ。

分かってたんだ。

そう、だよね...。

匠望くん、すっごく鋭いもん、

分かっちゃうよね。

もしかしたら最初からバレバレだったのかもしれない。

なら、尚更謝らなきゃな。


私は頭を下げた。


「嘘をついていました。本当に...本当にすみませんでした」


顔を上げると、黒柳さんとばっちり目があった。


「カノジョでもないのに、こんな贅沢な旅をさせていただいてしまいました。今はまだ無理ですが、必ず旅費はお返しします。ですので、もうしばらく...」

「その必要はないです」

「えっ?」


黒柳さんが立ち上がり、私の前まで来ると右手を差し出した。


「わたくしと友達になってください」

「いや、でも...」

「失恋の痛みは誰かに癒してもらわねばなりません。

あなたにこの旅をプレゼントしますので、その代わりにわたくしの傷を癒してください。それで、取引は成立です。

さあ、早く手を握ってください。握らないとわたくしが強引に引っ張りますよ」


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