素直になりたい。
私は天井を見上げて1つため息をついた。

思い出そうとしなくても、よみがえってくる。

櫻庭の無邪気な笑顔も、

櫻庭の得意気な顔も、

櫻庭の拗ねた顔も、

櫻庭の悲しそうな顔も、

櫻庭の思い詰めた顔も、

全部、

全部全部、

覚えてる。

抱き寄せられた時の

匂いとか、

鼓動とか、

熱っぽさとか、

全部、

全部全部、

忘れられない。

櫻庭が私に

無意識に与えてしまったものは

私の体内を循環し、

心に宿る。

永遠に消えない。

刻印のように、

色濃く焼き付いて、

消えない。


だから、

思い出す度に私は、

辛くなるし、

苦しくなるし、

切なくなるし、

悔しくなるし、

虚しくなる。

でも、同時に、

暖かくなるし、

優しい気持ちになる。


そんな矛盾した感情の正体を

私はまだ知りたくない。


だけど、

だけど、ね。

1つだけ、確かに言えること。

それは......




「嫌いです。とっても...」
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