素直になりたい。
文化祭まであと10日と迫ったこの日。

私達はついに教室での実演練習が始まった。

衣装以外の大道具、小道具さんが作ってくれたものを本番と同じように使いながらの実演練習は、なかなか緊張する。

私の出番は森で王子と白雪姫が出逢うシーンの後から。

卑劣な言葉ばかりを並べる中、

この劇の唯一の回想シーンでは、国王と手を取り、踊る。

このシーンを追加したのは、祐希さんの言葉を受けた翌日。

継母ガーネットの孤独と寂しさを際立たせるには、昔の幸せを描くと良いと思ったのだ。

私は気持ちを整え、国王役の櫻庭の元へと歩み出た。


「じゃあ、音楽流しまーす」


一応毎日祐希さんと公園で練習したから、足の動きは出来るはず。

あとは合うかどうか。


「では、スタート」


櫻庭が左手を差し出す。

私は右手をちょんっと乗せた。

そして、ステップに入る。

......はずが。

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