素直になりたい。
「うわっ!」


すぐさま転倒。

本番と同じヒールを履きながら踊ろうとしたら、完全にバランスを崩してしまった。


「直禾ちゃん、大丈夫?」


すかさず駆け寄ってくれたのは、24時間365日王子様の天羽くんだ。

私は迷わずその手を取って立ち上がった。


「ヒール大丈夫?もっと低いのにする?」


千咲ちゃんも心配してそう言ってくれた。


「うん。ちょっと低いのに...」

「ダメだ」


ドスの利いた声で櫻庭が言った。


「でも、これ踊りにくそうだし...」


千咲ちゃんがそう言っても櫻庭は首を大きく振り、私を刃のような鋭い目つきで睨んできた。


「このくらい高くないと見映えが悪い」

「いや、でも...」


見映えが悪いとか、そういうことは言うくせに、肝心なことは何も言わない。

そんな人と踊れる?

半ば嫌になりながらも、ここで折れるわけにはいかないから、私は立ち上がった。


「このままでやる。もう1回お願いします」
< 201 / 372 >

この作品をシェア

pagetop