素直になりたい。
しかし、そのもう1回はもう10回くらいになってしまった。


「ちょっとぉ、鷲尾さん!あなたわざとやったんの?」

「新大くんと密着したいからっていつまでも出来ないふりしてんじゃないの~?」

「いや、別にそんなつもりは...」

「ワタシ、塾あるから帰るわね」

「アタシも~」


止めようとしたけれど、クラスの大半が飽き飽きしているこの状況で続けるのは無理があり、私は諦めてしゃがみこんだ。


「痛い...」

「大丈夫?」


千咲ちゃんが駆け寄ってくれる。

私のせいで千咲ちゃんのダンスシーンは全然練習出来なかったのに...。

責めてもらってもいいくらい。


「ごめん。私のせいで」

「いいよ。人間誰しも初めてのことは戸惑うもの。毎日練習してればきっと出来るようになる。頑張ろ」

「うん...」


とは言ったものの、私の心はバリバリに割れてしまう。

皆が去った後、2人で踊ると、千咲ちゃんと天羽くんペアは、舞踏会とラストシーンでやるはずの2種類のダンスを完璧にこなしていたのだ。

こんなのと比べられて批判されるくらいなら、最初からやらない方がマシに思えてくる。


「じゃあ、今日はこの辺で。また明日頑張ろ」


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