素直になりたい。
千咲ちゃんと来たのは、2年B組がやっているカフェだった。

まだ劇が終わっていない時間で、体育館に人が流れているため、思ったよりは混んでいなかった。

私達は窓際の席に通され、向かい合って座った。

アイスコーヒーが到着するやいなや、渇いた喉を潤すためにガブガブと飲んだ。


「直禾ちゃん」

「えっ?あ、うん、何?」


飲みのに必死で千咲ちゃんの存在を忘れかけていた。

それくらい、体に水分が足りなかった。


「あれ、演技じゃないよね?」

「えっ?い、いやあれは演技だよ。ガーネットの気持ちに入りこんだら、あんな風になっちゃって。私、女優になれるのかなぁ、あはは」

「それは無理。だって、顔に書いてあるもん、直禾ちゃんの気持ち」


私はまた一口含んだ。

千咲ちゃんにはバレてしまったみたい。

なら、仕方がない。

もう、正直に話すしかなかった。

だって、黙っていても何の解決にもならないから。

私だって、楽になりたいから。


「あの、実は...」
< 267 / 372 >

この作品をシェア

pagetop