素直になりたい。
「直禾ちゃん?」


その声に驚き、私の涙は一瞬で蒸発した。

私はポケットからハンカチを取り出し、目元を覆った。

こんな顔、見せられないよ...。

どんなにブサイクな顔でも、

気にするよ。

だって、

王子様にこんな顔見せたら、

失礼でしょう?


「直禾ちゃん、どうしたの?大丈夫?」

「あ、うん。大丈夫。それより、天羽くんはどうして...」


その続きを言おうとした時、背中に重みが加わった。


「あ、天羽くん...」

「泣かないで。オレがいるから」


天羽くんが私の頭を優しく撫でてくれる。

なんでこの人はこんなにも優しいのだろう?

どうして、

いつもいつも、

24時間365日、

王子様でいられるんだろう?

そんなに優しくされたら、

勘違いしてしまう。

だから、やめて。

期待、させないで。

誰かが私を想ってくれるなんて、

そんな奇跡、

少しも

ないんだから。

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