素直になりたい。
それだけは嫌だから、私は1人膝を抱え、壁だけを見つめてもんもんと考えた。

本当に櫻庭なのか。

櫻庭にあんなことを言ってしまって、私は本当に大丈夫なのか。

これから私と櫻庭はどうなってしまうのか。

なんて、考えなくても分かること、か...。

元に戻るだけだ。

いじめっこの櫻庭と、

いじめられっこの鷲尾に、

戻るだけだ。

私がこの9ヶ月で感じてきた感情も、

紡いできた言葉も、

重ねてきた思い出も、

ひとりでに育った想いも、

全て忘れれば良いんだ。

失くせば良いんだ。

リセット、すれば良いんだ。

櫻庭を良く知らなかった頃の私に

戻ろう。

どうせ、私のこの想いも偽物で、

例え本物だったとしても

届かないのだから。

叶わないのだから。

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